子供のデジタル生活について(3/4)
問題なのは、中高生がスマホの利用に伴って生じる生活上の不全感を意思の問題として帰結させてしまう点です。

少なくとも身の回りの友人は表向き楽しそうにデジタル生活を送り、問題を抱えている様子はとくに見当たりません。それぞれ「私は自分自身の選択の下でスマホを利用しているだけで、なんの問題も感じてないよ」といった無言のメッセージを発してさえいるようです。このような状況で、「自分だけがスマホに振り回されて時間管理に失敗しているのではないか」という不安は、自立すべき大人として自ら失格の烙印を押すような感覚とともに、隠し事として押し込まれることになります。仮に第三者の立場で助言する余地があるとすれば、この思い込みの袋小路から脱出するだけの手がかりとなる知識を与えることだと思います。反対にやってはいけないことは、「十分な自覚を持って」「今後は気をつけて」「固い決意をして」「強い覚悟の下で」など精神論に頼った曖昧で非科学的な「お説教」を展開することです。これらは現実にはなんの効果も生み出さず、叱責したい欲望をぶつけているにすぎません。
現代の社会が自由な意思を持つ独立した個人によって構成されているという基本的な建前は受け入れつつも、近時注目される認知心理学的・行動経済学的なアプローチは人間を特定の入力に対して特定の反応を示すマウスのような存在として検証を繰り返す作業であり、それらの研究が情報アプリケーションの世界を中心に目覚ましい成果をあげている現状を冷静に見つめるべきです。

以上をふまえて当社が提供する製品はいずれも、
1.当人がスマホ依存について自覚的であること
2.自己管理の失敗は意思の問題ではなく、環境の問題として対策すること
を前提にして制作されています。これはサービスの利用にあたっては、当人が問題の構造を理解した上で、主体的に利用する姿勢があるということです。たとえば、ネット依存を対策するMiddlemanではフィルターを提供しておりますが、これは従来的な意味合いの「有害なコンテンツから子供を守るフィルタリングサービス」ではありません。
当社が提供するフィルターは、スマホ依存を引き起こす仕組みを無効化するためのフィルターであって、危険なコンテンツを選別しません。ですから場合によっては、中高生がどぎつい無修正動画に遭遇したり、どこかで拾った惨殺体の画像が偶然目に飛び込んで来たり、ダークウェブを覗きにいったり、出会い系サイトに登録してみたり、匿名掲示板で喧嘩したりとデジタル空間で火遊びをするかもしれませんが、そうした「思春期の危険な冒険」について当社では問題視しないという立場をとります。
反対に断固として許容しないことは、人を無自覚のうちに依存状態におとしめるテクノロジー、すなわちよく工夫された画面構成や通知機能、おすすめ機能です。画像や映像などのコンテンツと違い、これらはサービスやアプリ自体を構成する要素であるため、ユーザにとっては意識することが難しく、当たり前に存在する環境の一部として無警戒に受け入れてしまいがちです。しかし実際には、人をスマホ依存におとしめるのはまさにそういったデジタル空間の環境の部分です。